電気回路理論における過渡現象とは!?
過渡現象とは、国語辞書(大辞泉)には「ある状態に変動があったときから次の安定状態に至る間に起こる現象」とあり、ある回路のスイッチを閉じた瞬間から安定状態までの時間的変化のことをいう.これと常微分方程式が絡んでいるわけだが、そもそも常微分方程式ととは、『初期条件』と『導関数と原始関数とが等式で結ばれたモノ』が定まれば、未来の運動の変化の様子がわかるといったものだった.
ここでは工学部在学中ということもあり、電気回路における微分方程式の活用といったところで、数学的背景を肌で感じて頂きたくその理論を提供する.
図の回路において、時間t=0[s]のとき、スイッチを閉じたとすると
初期条件は、コイルに初期電流はなく、又コンデンサには初期電荷は蓄えられていないから、コイルは開放(導線が切れた状態)され、コンデンサは短絡(普通の導線と同じ)される.
つまり、回路に電流がながれないことから、
電流i(0-)=i(0+)=0(鎖交磁束不変の原理:コイルの電流は変化しにくいと思って下さって結構です)
となる.
ところで、この回路の微分方程式を記述すると、
キルヒホッフの電圧則より回路を一周した電位差は0だから
V=Ri(t)+Ldi(t)/dt+(1/c)∫0t i(t) dt…①(これからは機種依存文字は断りなくドンドン使ってきます^^;)
となる.
ここからは微分方程式を解くだけです.
まず、微分方程式の一般解は、『同次形の方程式の解』と『特殊解』の和で表されます.
同次形とは①の左辺が0の式であって、
要は一回微分した以下の等式です.
0=Rdi(t)/dt+Ld2i(t)/dt2+i(t)/c…②
ここで、D≡d/dtと置換すると
0=RDi+LD2i+i/c
=i(RD+LD2+1/c)
ここで現実的ではないけど簡単のため、R=4[Ω],L=1[H],C=1/3[F](これらの値は後で微調整可能)としますと
0=i(D2+4D+3)
=i(D+3)(D+1)
i≠0だから、D=-3又は-1
故に同次形の一般解は
ic(t)=C1e-3t+C2e-t (但し、C1,C2は定数)
一方、①の特殊解は
ip(t)=C3 (但し、C3は定数)と置けるので
これを②に代入すると
C3=0となり、ip(t)=0となります.
以上より求める一般解は
i(t)=ic(t)+ip(t)=C1e-3t+C2e-t …③
更に、初期条件i(0)=0より
i(0)=C1+C2=0…④
ここで③を一回微分すると
di(t)/dt=-3C1e-3t-C2e-t…⑤
t=0のとき
di(t)/dt|t=0=-3C1-C2…⑥
また、t=0を①に代入すると
V=Ldi/dt|t=0 (L=1[H])
となり⑥へ代入すれば
-3C1-C2=V…⑦
④,⑦を解くと
C1=-V/2
C2=V/2
故に、未来の電流の変化を記述した微分方程式は、
i(t)=-(V/2)e-3t+(V/2)e-t
となることがわかった.
この他にも微分方程式では、自然界現象の未来予測の為に利用され、非常に重要な位置を占める分野となっています.ニュートンの運動方程式も微分方程式で記述されてますよね.
※計算の誤りなどがありましたらご指摘下さい^^