微分方程式を演算子法を用いて解く時

微分方程式演算子を用いて解くと解きやすい場合があります。

例えば、以下の微分方程式はどうでしょう。

\frac{d^2{y}}{dx^2}-5\frac{dy}{dx}+6y=4e^{x}-e^{2x}

普通にやる場合は、特性方程式(右辺がゼロ)から余関数ycを求め、右辺が『4ex』のときの特解①と右辺が『-e2x』の場合の特解②とを代入法かロンスキアンを用いて求めなければなりません。これは結構面倒です。


そこで、求める一般解は

y=C_1e^{2x}+C_2e^{3x}+2e^{x}+xe^{2x}

(C1,C2は定数)になりますが、演算子法を用いればもっと楽に解けます。


特に、特解が代数的に見事にわかるのがこの手法の威力だと思います。


演算子法を用いれば、特解①,②はそれぞれ

\frac{4e^{x}}{D^2-5D+6}=\frac{4e^{x}}{1^2-5*1+6}=2e^{x}

\frac{-e^{2x}}{D^2-5D+6}=\frac{-xe^{2x}}{2*2-5}=xe^{2x}

となります。(ただし、D=d/dx)


なぜこのようになるのか気になる方は以下の証明をご覧下さい^^


まず、関数f(t)を

f(t)=a_0t^n+a_1t^{n-1}+...+a_n

と置き、t=Dを代入し

f(D)=a_0D^n+a_1D^{n-1}+...+a_n

とすれば

D^ne^{\alpha{x}}=\alpha^ne^{\alpha{x}}

(α:定数)より

f(D)e^{\alpha{x}}=f(\alpha)e^{\alpha{x}}

となることがわかり、f(α)=0でないならば

\frac{e^{\alpha{x}}}{f(D)}=\frac{e^{\alpha{x}}}{f(\alpha)}

が成り立ちますので、これより最初の特解①が求められたのです。


さて、もう1つの特解②を求めるための手法を証明するのは面倒ですが、簡単に説明しておきます。


uをxの関数u(x)とし、以下が成り立ちますから(数学的帰納法で証明できました)

D^ne^{\alpha{x}}u=e^{\alpha{x}}(D+\alpha)^nu

先ほどと同様に

f(D)e^{\alpha{x}}u=e^{\alpha{x}}f(D+\alpha)u ・・・(*)

とします。


ここで、f(t)=0がt=αでm重解を持つ場合を考えると

f(t)=g(t)(t-\alpha)^m ・・・(**)

(g(t)は任意の関数)として表現できますので、これにm回微分を施してt=αを代入すれば

g(\alpha)=\frac{f^{(m)}(\alpha)}{m!} ・・・(***)

が得られることがわかるでしょう。


次に、(*)より

f(D)(\frac{x^me^{\alpha{x}}}{f^{(m)}(\alpha)})=\frac{e^{\alpha{x}}}{f^{(m)}(\alpha)}f(D+\alpha)x^m

が得られ、(**)から

\frac{e^{\alpha{x}}}{f^{(m)}(\alpha)}f(D+\alpha)x^m=\frac{e^{\alpha{x}}}{f^{(m)}(\alpha)}g(D+\alpha)D^mx^m

がわかりますね。


もう一息ですので、あとちょっと付き合ってください^^;


そして、Dmxm=m!ですから

\frac{e^{\alpha{x}}}{f^{(m)}(\alpha)}g(D+\alpha)D^mx^m=\frac{e^{\alpha{x}}}{f^{(m)}(\alpha)}g(\alpha)m!

となり、最後に(***)を適用すれば

\frac{e^{\alpha{x}}}{f^{(m)}(\alpha)}g(\alpha)m!=e^{\alpha{x}}

となって、最終的な答えは以下のように書き記せました^^

f(D)(\frac{x^me^{\alpha{x}}}{f^{(m)}(\alpha)})=e^{\alpha{x}}

よって、これは以下の公式として知られるような形に変形できますね。

\frac{e^{\alpha{x}}}{f(D)}=\frac{x^me^{\alpha{x}}}{f^{(m)}(\alpha)}

そして、この公式において『f(D)=D2-5D+6,α=2,m=1』と置けば、特解②が得られることがわかりますね^^


非常に長い文章になりましたが、以上で『演算子法による微分方程式の解法』を終えます。


※それにしてもコレだけ書くと結構復習になりますねぇ。