微分方程式の基礎

微分方程式が具体的に、自然現象とどのように結びつきがあるのかを目で見て知ってもらう為、今回は『空気抵抗を受けて落下するボールの速度の変化』を調べてみよう.

初心に帰り、まず、日常空間においては重力が働いているので、必ず物体は力の作用を受け地球の中心へと向かいます(自由落下).

さて、3次元空間では計算が面倒、かつ、一次元の場合でも十二分に理論が明確なため、そういった方向性で議論をはじめたいと思う.

質点の一次元運動において、外力を受けて運動する物体の運動はすべてニュートン運動方程式を満たします.

ニュートン運動方程式とは

   md2x/dt2=F

つまり、(物体の質量)×(加速度)=(力)である.

ひとまず問題では、『重力』と『空気中の抵抗力』が、質点に作用している力であるから、ここで、x座標軸を下向きを正としてとるなら、運動方程式は以下のように書き記せる.

   md2x/dt2=-mν(dx/dt)+mg (ν:比例定数[ニューと読む],g:重力加速度[m/s2])

となって、整理すると

   d2x/dt2=-ν(dx/dt)+g

となる.dx/dt≡vだから

   dv/dt=-νv+g…(*)

とより簡潔な形で表せ、これはテーマにあるよう一階の線形微分方程式となっている.

この微分方程式の解を求めるには『定数変化法』を利用する手法で行い、その流れを順を追って説明していきたいと思う.

まず、斉次方程式(=この場合、vの次数が0の項、つまりgが0のとき)は

   dv/dt=-νv

だから、変数分離形でこれをすらりと解くなら

   ∫(1/v)(dv/dt)dt=-ν∫dt

   ∫(1/v)dv=-ν∫dt

   ln|v|=-νt+B (B:任意定数)

故に、一般解は

   v=e-νt+B=Ce-νt…(**)

となろう.(C:任意定数)

ここで、定数Cを未知関数u=u(t)に置換するなら、

   v=ue-νt

となり、これを(*)へ代入すると

   u'e-νt-νue-νt=-νue-νt+g

   u'=geνt

変数分離形で処理すると

   du/dt=geνt

   ∫(du/dt)dt=g∫eνtdt

   ∫du=g∫eνtdt

   u=(g/ν)eνt+D (D:任意定数)

これを(**)へ代入すると

v(t)=[(g/ν)eνt+D]e-νt
  =De-νt+g/ν…(***)

初期条件v0=v(0)からDが求まり、D=v0-g/ν.

これを(***)へと代入すると

求める一般解、

v(t)=(v0-g/ν)e-νt+g/ν
  =v0e-νt+(g/ν)(1-e-νt)

となる.

以上が、『空気中の抵抗力を受けるボール(=質点)が落下するときの速度変化』を表現した式です.

ここでこの式は何を意味しているのかというと下記の事である.

v0<g/νのとき
引力によって加速されてvは増加するが、それにつれて空気抵抗が強くなり、vはg/νを越えることはなく、一方
v0>g/νのとき
空気抵抗が引力に勝り、vは減少し、tが無限大で一定値g/νに限りなく近づく事がわかる.

※誤り等がございましたらご指摘願います^^;