情報セキュリティに対する数学的アプローチ.

 興味深い話題があったので以下に紹介しておく.
 高度情報化社会という言葉が古臭く感じるほど、インターネット・電子メールは今や日常生活に欠かせぬものとなってきている.しかし、こうしたサイバー空間は、成済まし・改竄・盗聴が横行する物騒な世界でもあり、電子決済・電子署名が当たり前の現代では、本人確認・本人認証の技術がますます重要になっている事は咎められない.これに呼応するように発展を遂げているのが「暗号理論」である.今回のテーマは「暗号理論」なわけだが特に「公開鍵暗号」に論点を絞って述べていきたいと思う.
 まず、公開鍵暗号について詳細に検証していきたいと思う.そもそも、暗号には方式として「共通鍵暗号」と「公開鍵暗号」が存在し、その使用用途は主に秘匿と認証に別けられる.共通鍵暗号は、暗号化処理が高速に実行できるため、主として秘匿に用いられる一方、公開鍵暗号は処理速度が遅いため、情報自体をリアルタイムで暗号化する用途に向いておらず、主たる用途は認証となっている.秘匿通信と認証通信とでは前者の方が当然通信速度の速さが必要とされる事はいうまでもない.
 さて、ここからが本題の公開鍵暗号についての事例を提供していくところでして、その前にこの暗号理論を支える数学的な背景について些細ながらも述べることで理解が少しでも深まると思われるので書いておきたいと思う.公開鍵暗号は、素因数分解の困難性を利用するRSA暗号であるが、これについても数式も導入して書き記しておく.


与えられた暗号文aと公開鍵b={n,e}(ただし,n=pq)から対応するメッセージmを求めるためには,mに関する方程式「 a=(m^e) mod n 」を解かなければならないが、これはnの素因子p,qを知らない限り、困難であると信じられている.


 これが、数学の困難性を利用した暗号理論への適用の一例であるが、他には楕円・超楕円曲線上の離散対数問題の困難性を利用した楕円・超楕円暗号がある.RSA暗号とこの暗号では優位性は後者にあり、欧州でより研究がすすめられているそうである.

 『具体的な事例』
サイバー空間においては、成済まし・改竄・盗聴が容易に出来る環境であるので、本人確認を確実に行う事が基本的に不可欠である.住基ネットに関しては、プライバシーの観点から議論が多いが、国民一人ひとりが、間違いなく自分であることを権利として主張するためのサイバーパスポートとして広く活用すべきシステムである.この個人情報流出問題も記憶に新しいところですね.
 例えば、ある人が、これが自分の公開鍵だと主張しても、それを然るべき機関が保障してくれないと、ネットワークの向こうにいる人には信用があるはずがない.だから、この公開鍵に、都/県庁の公開鍵暗号秘密鍵を作用させれば、この人の公開鍵に正真性を付けることができる.ここからの更に込み入った例は情報系学科専攻者でないと理解できないと思われるので(自分もそうじゃないので)、これ以上はやめときます.