線形代数による経済分析と医学統計解析


昨日よりまた更に話のレベルが上がる様な気がしないでもないが、「線形代数」の重要性に関して多方面から論じてみたいと思う.線形代数を履修した方や履修しようと思ってる方にとっては参考になる話だと思うので、目を通すだけでもよいのでみていってほしいと思う.
 経済学における線形代数の位置づけは、昔ほど切っても切れない関係にまでなっているとはいえず、云わば、現在では様々な分野の数学(線形代数トポロジー、確率論、統計学関数解析等々)を元に構成している学問であり、数学の依拠なしには存在しえる事が怪しくなってくるといった面をもっているくらいで、それ程客体的に思われるように重要な立場を有していない.だからといって、線形代数の知識なしには経済学を学ぶ事は到底不可能であり、それ故、専攻生は初年次で線形代数の基礎を学ぶのである.かつては、線形モデル(線形代数と親和性のある経済モデル)を主な研究すべき対象として扱われてきたのだけれど、現在では様々な数学を用いた非線形経済学モデルを主体とした経済学研究が盛んに行われている.ここで、線形モデルと非線形モデルとの関係に着眼することで、現代の主要的な非線形モデルを従来のようにより線形代数に重きを置くようにできることが知られている.例をあげるなら、非線形モデルは数学的に構造が複雑で難解な事が多いため、それらを何らかの線形モデルに近似することでより簡単に扱えたり、また、逆に線形モデルで与えられたモノを非線形モデルに拡張した場合に、どれほどそれが維持されるのかを調べたりといった研究が行われている.
 線形モデルでは具体事例として「産業連関分析(投入と産出の間の関係)」や非線形から線形への線形近似に「ブラウアーの不動点定理」が有るが、医学統計解析についても述べるつもりで労力を最小限に抑えるため、ここでは割愛させて頂いた方が、読む方に取ってもいいと思うので(多分w)、そうさせて頂く.
 さて、ここからは医学統計解析では一体どのように線形代数が用いられているのか、その中味を探っていきたいと思う.現代の医学は、従来からみれば驚異的な進歩を遂げ、人類の生命に大きく寄与している.しかし、人が病気になる前に原因を突き止めてしまう予防医学が発展しただけであって、治療医学そのものが相当な発展を見せたわけではない.医学は基本的に物理学や化学などの実験程精密な実験をすることは困難であることが要因であり、人間の体内の状況は常々変化するものであり、それらを全て観測する事は不可能だし、かつ、個人差もあって、だから、治療効果の評価はそう簡単にはできないのが現状である.
 でも、このまま何もしないでいるとそれ以上の治療医学での成長は望めなく、そこでこの問題を打開する医学分野がタイトルにもある様に「医学統計学」である.様々に変化するデータから真の構造を見出すために、偶然変動の部分と系統的な部分とを適切に分離する統計モデルの視点が重要になってくるのである.
 統計モデルといっても、線形代数が基盤にあり、偶然変動と系統的な部分を区別する線形的なモデルはstudentのt検定がもっとも一般的であろうことが知られているそうだ.

以上より、線形代数の有用性が多少なりともわかってくれると幸いである.