エントロピーについて

エントロピーという言葉は、熱力学を学ぶ際に必ずといっていいほど目にする重要な概念ですよね。一般的にも『時間の矢はエントロピー増大則に従っている』とか『自分の部屋はエントロピーが増えている』など、使っている方も少数派ながらいるだろうかと思います。


そもそもエントロピーとは『系の状態の乱雑さ』を表す指標とされますけれど、具体的にはどういったものなのか少し考えてみましょう。


例えば、物体A(T_1)が物体B(T_2)にΔQだけ熱を伝導すると


Aの失うエントロピー

\frac{\Delta~Q}{T_1}

一方、Bの得るそれは

\frac{\Delta~Q}{T_2}

であるが、熱量ΔQが伝わるためには熱力学の第二法則より

T_1>T_2

なので、

\Delta~\frac{Q}{T_2}-\Delta~\frac{Q}{T_1}>0

よって

ds_2>ds_1

となりますから、エントロピーは増大する方向に変化が進むことがわかりますね。


今、熱力学的時間の矢に対してこのエントロピー増大則が当てはまっていますが、熱力学を生み出す宇宙論的な時間の矢も必然にしてそれが成り立っています。


ビッグバン宇宙、もとい、インフレーション宇宙以前では宇宙を決定する数多くの情報を含有しており、低エントロピー状態にあったといえますから、現在の我々の宇宙、分りやすく地球規模で言えば、何百億年前に比べれば、ずっと『情報の複雑さがなくなってきてますから』(地球が誕生して人類が誕生し、生活が豊かになっている等)、エントロピーが増えてきているといえます。ただし、ここで誤解してはならないのは、現代科学の進歩により昔よりも科学的技術が発達しているから、今の方が『複雑なはず!』と捉えるのはナンセンスになっちゃいます。分りにくいところですが、ここでいう『情報の複雑さ』とは、逆の意味であることに注意して下さい。


宇宙論的時間の矢は、熱力学的な時間の矢を支配するに留まらず、波の時間の矢や進化の時間の矢も支配します。つまり、宇宙論的な時間の矢さえ解明できれば『時間』という曖昧な概念の解決への糸口は見つかるのだろうと思えます。