『志学数学〜研究の諸段階〜発表の工夫〜』を読んで。

研究者を目指している者にとって一度は読んでおいても損はない良書の中の良書。

著者の数学者になるまでの過程や論文発表時の注意点、数学者に必要なことなどを著者の実体験も多少なり踏まえながら記述されいます。

印象に残っていることとして、『やろうと思って数学をする』から『気がついたら数学をしていた』への移行が重要だということですね。

昔に比べ学問に対する意識が低下する中、このような環境のもとで自己の世界を築いていくことはあまり賢明ではなく、諸刃の剣と言わざるを得ない。

しかし、成功者達(=数学者達)は逆境にもめげず採算性をも犠牲にする覚悟の上に、素晴らしいものを作り上げてきたことだろう。

ただ、ほんの一握りしかいない数学者になるためには、今の社会状況の抜本的な躍進への脱皮が必要とさえ感じてしまう。

現在では、受験勉強の影響下により、数学は受験合格のための道具として使われており、昔ほど美の追求の、つまり、真の喜びや美しさの発見の道具としてはあまり使われないようになっていった。

数学者でさえも、社会的地位や名誉のために他人を蹴落としてまでという心構えで数学に臨む姿勢さえ伺える者も中にはいるだろう。

いつから...こんな馬鹿げた目標のために、数学が使われるようになったのか...(残念だが生きていく上では、仕方ないかもしれない...

勿論、両方を追求するのがもっともいいのだが、そういった人はかなり少ない...無に等しいのではないかと思う。

こういった意味から、この社会態勢を変えずにこのままほーておくと、いつかは数学は廃れてしまうだろう。

ここで、数学という学問自体を愛した数学者達が増えていくことを目標に掲げた、第一任者としての『秋山仁』がいるのではないかと思う。

美の追求の意義は、このような人物から伝えられていくのではないかと思われる。

そして、こうした数学者がいような環境が整った中では、双方の向上がはるかにスムーズにいくし、何かと好都合なのではないか。

すべてがそうではないが数学者を目指す人はそれなりの勇気が要り、新たな数学の世界を切り開くという意味で、非常に大変だろう。


興味をもった方は以下の書籍をご覧になってはいかがですか^^

志学数学―研究の諸段階・発表の工夫    シュプリンガー数学クラブ
   

価格: ¥1,764(税込) 単行本: 159 p 出版社: シュプリンガーフェアラーク東京