ナノトライポロジーについて

摩擦を科学的に研究するために、1966年ギリシャ語の「トリボス(こする)」にちなんでイギリスで作られた学問がトライポロジーという学問です。したがって、ナノトライポロジーとは、摩擦現象のナノ(10-9)オーダーでの振舞いやその制御について研究する学問体系ということができます。


ナノトライポロジーという学問領域がなぜ広まったのかといえば、近年のナノテクノロジーの急速な発展に伴う素子の微細化が原因であり、例えば、半径1cmの球体を1nmに縮小すると、表面積の体積に対する比率は1000万倍に増加します。このとき、表面を介して働く微視的な物理・化学結合が顕在化し、摩擦力が極めて大きくなるのです。したがって、マイクロマシンの稼動や原子・分子の操作を安定に遂行するのは摩擦の影響により困難になります。それ故、産業上の要請から低摩擦条件の探索が急務なのです。


ナノトライポロジーという学問領域は、今後、固体超潤滑素材の開発によって、精密機械や微細素子の極めて長時間にわたる安定的な稼動が可能になります。更に、材料や医療・バイオなど様々な分野での活躍が期待できるでしょう。


このように、ナノトライポロジー研究は、ナノの立場からすべての事象のエネルギー損失を最小限に抑え、夢のゼロミッション社会を実現する原動力となり、きわめて大きな経済効果が期待できるでしょう。



※「ゼロミッション」とは1994年に国連大学が提唱した構想で、『ゼロミッションは、産業に投入されるすべての資源を最終製品に活用するか、他の産業、生産工程の付加価値を持たせる資源として活用することを目指し、複数の産業が、すべての産業廃棄物や副産物が他の産業資源として活用され、全体としていかなる形の廃棄物も生み出さない統合化された生産を行う産業集団へ編成することを目標として...』と表現されています。


まあ、こういった学問は主に機械系学科の人がやることなので、僕にはそんなに関係はないのでしょうが^^;