ラプラスの魔、摂動論とは...(太陽系はいつまで現状態を維持するのか!?)

 そもそも摂動論とは何かというと、3体問題以上を扱うときに活躍する概念であり、太陽系の惑星や太陽の運動について述べる時に、効果を発揮するものである.抽象化せず、概略を述べるなら、惑星や太陽の軌道を近似的に計算し、近似の精度を徐々に高くして、真の軌道を導く手法である.更にいうなら、摂動論のやり方の一つとして、まず第0近似として各惑星は、他の惑星の影響を無視した楕円軌道を描くと仮定し、次に、他の惑星が第0近似で求めた運動をしていると仮定してある惑星や太陽に働く力を計算し、第0近似への補正を求めると第一近似での運動が得られ、これを繰り返し第二、第三とすれば、近似の精度が上がっていくだろう.
 しかし、これは遠い未来にまで、真の運動に限りなく近づくとはいいきれないそうだ.そこで、今から約400年くらい前に、木星の軌道が縮小し、土星の軌道が拡大し、将来は、木星が太陽に落ち込み、土星は永遠の宇宙に飛び去るのではないかと、危ぶまれていた.このことは、ニュートンの運動理論を否定するものであると疑われ、かの偉大な発見が無に帰するのではないかと思われたのだ.
 そこで、この問題を解決したのが、フランスの数学者ラプラスであり、摂動論の仮定のもとに、太陽系は数千年くらいは安定性を維持していることを証明したそうである.この証明はニュートン力学の正しさをも同時に立証したもので、ラプラスには驚かされることばかりである.
 一方のラプラスの魔とは、

「あらゆる現象は多数の質点の運動に還元できる。力の法則と初期条件がわかれば、連立微分方程式を解けば未来がわかる。人間には無理でも充分な能力をもつ英知(ラプラスの魔)にはそれが可能だ」

という力学的な自然観によるものである.これは摂動論の前提条件しても当てはまるだろう.


 最後に、最大の関心ごとは、ラプラスの魔は本当に真の将来を知り得るのかということであるかと思う.実は、ニュートンの力学理論では、3体以上の問題は、数学者ポアンカレによって一般に成り立たないことがわかっている.カオスと呼ばれる現象で証明したそうだが、今の自分にはそこのところがピンときてない^^; 要するに、ラプラスの魔は3体問題では通用しないということになってくる.初期条件を無限に知らない限り、この方法での未来予測は不可能ということになる.

 例をあげていうなら、なぜ初期条件を無限に知らなければならないかというと、地球からボールを速度方向に投げてみると、普通に考えるならある速度より大きければ宇宙に飛び去ってしまいます.しかし、はたしでそうだろうか...地球から脱出できる速度であったとしても、他の惑星の万有引力のせいで、出られないかもしれません.逆に、惑星間による万有引力がたまたま都合のいい方向に働いていたならば、脱出できるかもしれないですね.

 従って、どの速度で地球から脱出できるのか、わからないことになるかと思う.
これが、初期条件を無限に知らなければ、未来が予測できないといったことに繋がるのである.

 ここまでを理解できたなら、自然の摂理とは、如何に複雑なものかがわかるでしょう^^