物理学の根本たる『古典力学』を学ぶなら...

 物理学専攻生なら誰もがご存知の自然哲学の数学的諸原理、いわゆる「プリンキピア」の解説本といったものが、「古典力学の形成(ニュートンからラグランジュ)」(山本義隆著)であろう.この本は、控えめに言ってやや原書に近いと思われ、表紙にもあるようにIsaac.Newtonの記述とG.W.Leibnizの書き込みが記してあり、内容も順ニュートン問題や逆ニュートン問題、Leibnizのプリンキピアへの影響など多岐に渡り非常に知的好奇心を誘うようなものだったと思われる.そして、哲学的な思考法、数学的な理論展開の明快性、先取権争いのあの惨さには鳥肌が立つほど、知られざる背景を知ったという感覚にとらわれてしまった.しかし、定価が6千円と高いのが難点であり、学生である自分も買うのに勇気が必要だったw
 ここで、順ニュートン問題と逆ニュートン問題の簡単な説明をしておくとしよう.順ニュートン問題とは主に、円錐曲線を取り扱った軌道を仮定してから、その軌道はどのような力の作用の基に成り立っているのかということを取り扱った問題であるのに対し、逆ニュートン問題とは、単なる逆であって、つまり、力の作用がありそれをもとにどういった軌道を描くのかということが逆ニュートン問題の対象である.ニュートンの流率法(幾何学微分法)によって、以前にも話したが視覚的にという点ではよいものの、余人の閃かぬ圧倒的とまでいわれるような超天才的な、いわば、彼にしかわからないような(しかし、真理はついている)記述で議論が展開されている.それに対して、ライプニッツの『プリンキピアの書き込み或は「試論」』では、機械的操作だけで順・逆ニュートン問題が解けるといった代数的・解析的微分法の導入を足掛かりに見事なまでのすっきりとした論述で、様々な問題をいとも簡単に解いている. 
 ところで、疑問に思う事なのだが世界三大数学者といえば『ニュートン』『ガウス』『アルキメデス』といった名前が挙がるかと思う.では何故、あらゆる分野に卓越した万能の『ライプニッツ』が挙がらないのか...決して、現代の微分積分法の発見に与えた影響は、すくなくない.むしろ、記号法導入の意味ではライプニッツの方がニュートンのよりも非常に受け入れやすかったと思う.結局、ニュートンは太陽系の諸惑星の運動から天体間に働く万有引力という概念を導き出し、数学的関係でそれらを『プリンキピア』で最初に纏めたのだから評価されたのだろう.ライプニッツは、後に『プリンキピア』を参照して、自筆の『試論』でそれらを展開している.
 しかしながら、ライプニッツの数学的貢献はこれ以外にも『組み合わせ理論』(いうなれば、論理学)がある.この『微分積分法』『組み合わせ理論』は連続性・離散性、つまり著しく相対する最高能力を一つの頭脳に統合したことは、彼以前に先駆者はなく、そして後継者もいないほどになっている.人間の脳が、この2つの能力を手に入れることはそう優しいものではないということらしい.大分はしょりはしたが如何にライプニッツが数学面で凄いというのがわかって頂けたかと思う.
 つまり、ライプニッツもこのような面がより評価なされるならば、世界3大数学者に名を連ねることができるであろうかと思いはしたが、数学に即して総合的にみて、自然科学は『ニュートン』『ガウス(整数論で有名.数学を学んだ人ならガウス記号ってのも聞いたことあると思うし、電磁気学ならガウスの法則、統計学ならガウス分布と多方面に影響を与えている)』『アルキメデス(金の王冠と不純物入りの王冠での浮力の発見が特に有名)』を認めたのであろう.